佐藤さんの非日常な日記

日常にありそうでない、体験…。

ブログノベル「味覚」

美味いっっっ!!

 
どこが美味いんだよー!
にっが!!苦いよ!!
このコーヒー。
 
それはー、まだまだ君がねー、お・子・ちゃ・ま・ということだよ。
コーヒーを飲めるようになるのは、君がもう少〜し、オトナになってからだね。
 
出たよ。大人になったら美味しくなるとかいう、ごまかし。
 
うん?
 
舌ってのはさ、子供の頃の方がよっぽど敏感に味が分かるもんなんだよ。
そして、大人になればなるほど、衰えていき、味が分からなくなるんだ!だからね、今年でもう40歳を過ぎるマスターが、そのコーヒーを美味しいと感じるのも、舌が衰えて、正確な苦味や味が分からなくなってるからなんだよ!
つまり、僕が不味いと感じるってことは、それだけそのコーヒーが苦くて美味しくないってことなんだ。
どう?僕の論理!当たってるでしょ?
 
う〜ん、どう?って言われてもね〜。
じゃあ、このカフェラテは?これは絶対美味しい筈だーよ!
 
だ〜か〜ら〜、カフェラテにしたって、一緒だよ。そりゃあさ、コーヒーにミルクを入れて、多少飲みやすくはなってると思うけど、所詮は、コーヒーでしょ?美味しくないに決まってるよ。
 
まあまあまあまあ、先ずは、飲んでみなさいよ。
 
うぇー、まあ、じゃ、一口だけ…。
ゴク、ゴク、ゴク、ゴク…、飲める…。
悪くない、いや、美味しいかな。
 
だ〜ろー!
これはただのカフェラテじゃないのさ。
 
っていうと?
 
さっきのコーヒーにココアをブレンドして、
ミルクで割ったのさ、だから、殆どココアの味しかしなかったろ?
 
うん、ココアだった。
カフェラテなんて飲んだことなかったから、ココアみたいな飲み物なんだなーって思ったよ。
そしたらそういうことだったんだね。
 
そういうことさ。つまりは、君だって味についてよく分かってない訳だ。
甘〜くなってれば、飲めちゃうって事だ。
 
いや、それを言うなら、ココアは、美味しいんだよ。そしてコーヒーは、やっぱり苦くて不味い。
 
強情なボーイだなー、それなら最後にこれを出そう。
 
こ、これって…。
 
そ!チョコレート
ほら、食べてみて!あ〜ん。
 
もー、自分で食べれるよ〜。
もぐもぐ…、
!?
にっが!!
苦いよー、なにこれ?本当にチョコ?
 
ああ、混ざりっ気一切なしの正真正銘本物のチョコレート、
カカオ100%のね!
 
え?ということは…。
 
うん、砂糖は一切入ってない。
やっぱり君は甘ければ良いってことになるねー。
 
うう、じゃあ、分かったよ。確かに甘い物が美味しい、これは認める!でも、苦いものは不味い!これは、歳を取ると味覚が麻痺してきて、苦味が薄れてくるから、歳を取った人は苦いものでも美味しいって言うんだよ!
 
まあねー、そうなのかも知れないけどねー、
さっきから僕より若いみたいな言い方してるから、付き合って合わせてあげてたけど、、
おじいちゃんももう良い歳だよ〜。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ブログノベル「SNS」

カシャ!

みんなー!見てるー?
 
カシャ!
いやー、お茶がうんまい!
 
カシャ!
今はここでーす!イエイ!
 
カシャ!
見て見てー!絶景だー!
 
カシャ
星や月が綺麗ー!
 
カシャ
寒くなてきたー!
 
カシャ
まだまだいくぜー!
 
カシャ
ふぅー、眠くなってきたー
 
カシャ
少し寝まーす!
 
 
 
しっかり!しっかりしてください!!
 
遭難して一ヶ月、無事で何よりです。
1人でよく頑張りましたね。
沢山仲間がいたようですが、あなた以外のみんなは…、発見した時にはもう……。
 
え?携帯電話?
ああ、これですね?そこに落ちていました。
ちょっと壊れているようですね。
 
SNSに投稿?
 
仲間の一人がずっと携帯電話のカメラを使って写真を撮っていた?
その写真をSNSに投稿していたんじゃないかって?
 
この島って電波ありましたっけ?
 
もう少し先の島だったら電波も届いたかもしれませんが、ここまでは、ほとんど届いていないですね…。
 
しかし、食料は何を食べてたんですか?電池もよく持ちましたね。
 
仲間で少しの食料を分け合って?そうですか、そうですか。
わあ、モバイルバッテリーも、こんなにたくさん。
 
でも本当に無事でよかった。
生き残ったのはあなた一人ですが、みんなで協力し合ったからこそ、あなた一人だけでも生き延びれたんだと思います。本当によかった。
 
 
数日後…。
 
え?あの時の遭難者のSNSが出てきただって?
どれどれ。
 
これかーあの時の要救助者のSNSは、。
 
《みんなー見てるー?》
 
え!?
この時はまだ全員いたのか…。
でもあの人がいない。
 
《いやーお茶がうんまい!》
 
人数が半分になってる。これは、それぞれみんな水筒を二つ持ってる…。
 
《今はここでーす!イエイ》
 
ここは、発見現場よりかなり上がった所だ…。
また少なくなってる…。
 
《見て見てー!絶景だー!》
 
また別の場所、
更に減ってる…。
 
《星や月が綺麗ー!》
 
遭難してから最初の夜…。
 
《寒くなてきたー》
 
この段階でもまだ数人いる…。
 
《まだまだいくぜー!》
 
これは、さっきの人の服を重ね着してる…。
 
《ふぅー、眠くなってきたー》
 
そうだったのか…。
1人1人仲間割れを起こして、食料を奪いあっていき、最後に2人だけ残った、そして次が最後の投稿だな。
 
《少し寝まーす》
 
!?
 
ずっと、この写真の人を撮っていたのが、
あの時生き延びた、助けた要救助者だったのか…。
そして、この人が寝た後、この人を殺した。
だから、携帯電話のことを気にしていたのか。
自分たちのしたことがバレるんじゃないかと思って。
 
でもまさか、既にSNSに投稿されているとは、知らなかったのか…。
 
 
 
 
 

ブログノベル「自動販売機」

ガタンッ!ゴトン!カシャカシャーン!

「まあでも、あれですね。さっきの話ですけど、灯台下暗しってやつですかね…」

 

「あれ?」

 

「え?どうしたんです?」

 

「お釣りが10円しか出てこない」

 

「ええ!?いくら入れたんですか?」

 

「150円」

 

「これ120円って書いてありますね。詰まってたのかも、ちょっと叩いてみます」

ドンッドンッ!

 

「出て来ないね。ってか、金額表示されるところに、買ったあと10って出たんだよ」

 

「じゃ、これ140円ってことだったんですか?」

 

「そうだと思う。もう一回買ってみよう」

 

「え?いやいいっすよ!電話しましょ…」

カチャンカチャン、ポチ、

ガランガラン!

 

「あ、」「ほら」

 

「ってことは…、ちょっと120円入れてみますね。それでスイッチが光らなければこれは、120円じゃないって事が分かります」

カシャンカシャーン、カシャン、

 

「光らない…」

 

「じゃ、あと20円入れてみます」

カシャンカシャーン

 

「光った」

 

「ってことは、これ、表記には、120円って書いてあるけど、140円ってことですね。なんだこれ。どっちが間違ってるんだ?」

 

「元が140円なんじゃないかな。ほら、隣りの同じメーカーのナタデココドリンクは130円だし」

 

「いや、それだったらこっちも130円で揃えるんじゃないですか?しかもナタデココドリンクが130円でこのミルクコーヒーが140円って、サイズ一緒なのにおかしいですよ!」

 

「そうだねー」

 

「僕、電話しますよ!こういうの前にもあったことがあって、電話したら、お金も郵便で届けてくれるし、それ以降その時の自販機も直してくれたんで」

 

「いやー、いいよいいよ、思い出だよ」

 

「なんすか!?思い出って!」

 

「20円でこんなおもしろ話が出来たんだから、良い思い出だよ」

 

「いやいや、面白くはないですよ。腹たちます!

例え仮に本当に140円するもので、表記の方が間違ってたとしても、こっちは120円と思って、ギリギリのお金で買ってるんですから!」

 

「いや僕ギリギリじゃないよ」

 

「ギリギリじゃなくても、こういうのはちゃんとしといた方がいいんですよ!その方がこの自販機メーカーの為にもなりますから」

 

「うん、まあそーかー」

 

「んじゃ、かけますね!」

プルルルルル

ガチャ

 

「あ、今ちょっと××の自販機でミルクコーヒーを買ったんですけどー、120円って書いてあるから150円入れて買ったらお釣りが10円しか出てこないんですよ!これってもちろんお釣り返してもらえますよね!」

 

「あ!!?おい!ちょっと!これ見て!」

 

電話越しに自販機の下の方を見る。

 

《ALL140円!!

表記されてる金額は、140円より高い物、安い物ありますが、一律140円です。》

 

「あ、はい…。今確認しました。下にデカデカと書いてありました。え?でも混乱させてしまって申し訳ありません?お金送ってくれるって?

いや、もういいです。それじゃ」

プチ

 

「………。なんだよこれ。いやでも普通こっちの表記しか見ないっすよねー?」

 

「良い思い出になったよ。

ホント、灯台下暗しだったね。」

 

 

 

 

 

ブログノベル「夢」

わたし…、ずっと前から、あなたのことが…、好きでした!付き合って下さい!

 

え?うそ…、も、もちろん!やった!!僕の方こそ君のことが好きだった!君と付き合えることが出来るなんて!これはまるで、夢のようだ!!!

…………あ…、そうか…、

これは、夢だ……。

 

………。

 

やっぱり夢だった。

いつの間にか寝ちゃってたのか。

いつもそうだ、嬉しいことがあっても、不意にこれは夢だと気づいてしまう。

夢の中で。

せめて、夢の中でくらい、夢だということも忘れて、楽しくいられたらいいのに。

あの時もそうだ。大好きなアイスクリームがうちの冷凍庫に山ほど入っていた時、すぐに気づいた。いや、こんなの買った覚えない。これは夢だ。って。

せめて夢の中でくらいアイスを山ほど食べたいよ。現実でそんなことしたら、絶対お腹壊すんだから。

はあーー。

自分は、現実主義者ってことなのかな、夢みたいな事を信じられないというか。まあでも、それで助かったこともいくつかある。

それは、怖〜い夢を見た時だ。

ゾンビの集団に襲われて、もう逃げ道も絶たれた。あとは、ゾンビのエサになるしかない。って時に、いやまてよ、こんなことありえない。これは夢だ。って覚めることが出来る。

あーあ、でも嬉しい時は、覚めたくないし、怖い時は覚めたい。都合良くいかないもんなんだなー。

テレビもろくなのやってないし。

昨夜のホラー番組の絵の話題と、深夜の事故のニュース。

とりあえず、学校行くかー。

今日は体育館で、逆立ちの稽古があるからな。

えーっと、ビデオカメラも持ったし、準備OKだな。

さて、行くか。っとその前に、今の時間は…、今日は、レンタルショップに行く日だったじゃないか。学校行く前によって行こう。

にしても、せっかくの誕生日だってのに、昼からレンタルショップも切ないよなー。

って、バカバカバカ。

今日は、勝負の日でもあるんだ。

あの子に告白する。

そうか、だからあんな夢を見たのかも、

きっとそうだ!気合い入れていかないとな!

さあ、しゅっぱーつ!

 

ん?今日はあれか、近所の会社が毎年やってるマラソン大会の日か。

それにしても、今年は、やけに女性ばかりだなー。先頭の方に1人冴えないおじさんが走ってるだけで、あとはみんな女性か…。

 

ん?

 

あんなところにナシゴレン屋さんなんてあったっけ?

しかも今、L'Arc-en-Cielのhydeが入っていかなかったか??

それにラバーガールの大水?後ろの方には、ボディービルダーのような作業員が2人。

 

今日は、なんだか変わった日だなー。

 

まるで、

 

夢のような……。

 

………。

 

 

 

 

 

ブログノベル「しゃっくり」

ひっく!

これで1,250回目…くらいかな。

 

しゃっくり。

 

止まらない。

 

最初は慌てたけど、もう今はそのうち止まるだろうとしか思ってない。

しゃっくりが100回でたらヤバいとかってのも単なるガセネタだ。

これまでの、最も長くしゃっくりし続けた人物は、アメリカのチャールズ・オズボーンという男性。ギネス記録保持者だ。

役68年間しゃっくりが止まらず、毎分20回程のしゃっくりをし続けていて、

その間にでたしゃっくりの回数は、ゆうに4億3千回以上とのことだ。

その後、突然にしゃっくりがおさまっている。

 

僕はどうだろう。

ギネス記録ってのは、ほんの少し興味があるけど、流石に68年間も止まらないのは嫌だな。

 

ひっく!

 

止められるなら止めたい。

 

最初は、100回しゃっくりが出たらの噂を真に受けて、色々止める方法を調べてやってみた。

 

まあでも、あの時はかなり焦ってたから、効果的にその方法を出来てなかったのかも。

もう一度試してみるか。

 

・しゃっくりを止める方法。

先ず最初に試したのは、「上を向く方法」

真上よりも後ろを見るくらいまでアゴを上に引き上げ、喉のナントカって部分を開放する。

そうすると、しゃっくりが出る原因のナンチャラって部分が上手いことなって、しゃっくりが止まるらしい。

この方法は、今回に限らず、いつもやってる方法で、効果はてきめんだ。

だが、この方法は、初期に限る。

それこそ、しゃっくりの1発目が出たら、すぐに上を向く。すると、止まる。

そしてこの方法は、出来れば自分で上を向くのではなく、人にクイっとアゴを上げてもらうのが良い。

突然クイっとやられることで、「気をそらして止める方法」も兼ねてるのだ。

 

これでダメだった場合は、次に水分を補給する。

しゃっくりは何か飲み食いしたあとにゲップが出ないことで起きる。

だから、何かお茶でも水でもいいので、飲んで、ゲップをするのだ。その際、飲むときに鼻をつまんで、これまたアゴを上げて飲むと効果的だ。

 

さて、やってみるか…。

 

………

 

 

ひっく!

 

ダメか…。

 

じゃ、次だ。

 

しゃっくりを止める方法に「気をそらして止める方法」がある。

突然ワッ!と驚かされたり、「納豆の原料は?」なんて質問を突然出されたりして、しゃっくりとは別の方向に気をそらすことで治る方法だ。

ただしこれは、他に協力してくれる人がいないと出来ない。

だから、今回は却下だな。ひっく!

次は、

 

「ゆっくり呼吸する方法」

大きく、10秒かけて息を吸い、

10〜15秒止める。

そのあとゆっくり10秒かけて息を吐く。

これを繰り返してると自然に止まる。

 

やってみる。

 

 

ひっく!

 

次だ…。

 

「両耳を人差し指で押す方法」

これはテレビの某番組でも紹介されていたり、Twitterでも話題になった止め方だ。

両耳の奥を人差し指でグイグイ押す。

それを30秒から60秒やってると、止まる。

これには、医学的な根拠があって、ナントカカントカだから止まる。のだが、

この方法は、逆にやってはダメな方もいる。

循環器系や呼吸器系に病気を持ってる人はやったらダメだ。

でも僕は大丈夫だから、やる!

 

ひっく!

 

く、ダメか…。

 

やはり、何をやってもダメだ、僕はこのまま、68年間もしゃっくりをしていくしかないのかーーー!!!

 

きゃーー!!

 

!?

 

んもう!エッチな風!

 

 

ぱ、パンチラ…だと!?

 

 

僕は、あーゆーのは、ついつい、目を背けてしまうが、今は反射的に見てしまった!

 

ふぅー、

 

気がそれた…、そうだ、僕は今、それどころじゃないんだ。

この先長い年月ずっと止まることのないしゃっくりをどうにかしなければいけない。他にもまだやってない方法は、何かないか!それをやっても止まるかはわからないが、一体、どうすれば、どうすれば、どうすれば…、

あ…、

 

止まってる…。

 

 

 

 

ブログノベル「ボディービルダー」

いっち、にー、さんっ、しっ、ごっ、ろっく、しち、はっち、きゅー、じゅっ。

 

ふーっ、

 

はあ、

 

ふーっ、

 

はあぁぁぁ、

 

よっし!

 

いっち、にー、さんっ、しっ、ごっ、ろくっ、しっち、はっち、きゅー、じゅっ。

 

ふぅーーっ!!

 

さて?何をしているのでしょうか??

 

あ、簡単だって?

そんなのマッスル!マッスル!

ハッスル!ハッスル!

ウェートトレーニングに決まってるだろ!だって?

ハハハハハハハハハハ。

もっと分かりやすく言ってくれよ。

そう。

筋トレ。

筋力トレーニングさ。

おっと、筋肉トレーニングだって?

まあ、確かに、それも間違ってはいないかな。

筋肉を鍛えるには変わりないからね。

って、そんなことは置いといて。

今日は、僕が昔、ジムで筋トレ中に見たお話をするよ。

腹筋しながら聞いてくれよな!

いや、うそうそ!

そのままの、リラックスした状態で聞いてくれ。

 

これは、俺が体験した、本当にあった話だ。

あれは、そう、ジメジメと蒸し暑い頃の…。って、おいおい、ホラーはやめてくれだって?

大丈夫!

この話は、ホラーの話じゃないのさ。

まあ、受け取りようによっては、ホラーに聞こえなくもないけど!

俺が話すのは、大体、筋トレの話と相場が決まっているのさ!

なんだって?

大体じゃなくて、全部だって?

おいおい、

その通りさ!

じゃ、続きを話すよ。

あれは、まだ俺の上腕二頭筋もおぼつかない頃のことだ。

その日は、いつものように、ダンベルを使ったトレーニングのスタンディング アームカールをやっていた。

当時の俺が通っていたジムは、市が経営してるところでな、うん、そりゃその頃からGOLDジムの存在は知っていたさ、だけど、その頃の俺はとてまGOLDジムに通えるようなボディはしてなかったのさ…、ってか単純に、市の経営してるジムは安いからな!

まあそんな感じで、トレーニングをやってたのよ!そしたら、どうなったと思う?

わっかんねーかー、わっかんねーだろーなー。

俺がトレーニングしてる所へ、4人組のまあまあなボディーしてるやつらがやって来たのよ。

それで、どうやら、その中の一番細いやつを残りの3人で鍛えてやってるんだけど、そのやりとりがなかなかなもんでな。

鏡の前に細い男を立たせて、スタンディング アームカールをさせてるんだけど、

その周りにあとのまあまあマッチョな男3人が群がって、真ん中の細い男の体をベタベタ触るわけさ。

いや、あるよ!ウェイトトレーニングしてたらそーゆことはさ。

勘違いするなよ。ウェイトトレーニングの一番重要なポイントはフォームだ。

そのフォームが崩れないように、パートナーが補助をするのは、極々当たり前のことなんだ。

だがな、

その時のそれは、本来のそれとは、どーにも違って見えたのよ。

1人は片膝ついて、細男の右側で太ももをペタペタ触ってる訳さ、まあ、スタンディングアームカールってのは、上腕二頭筋だけの力でダンベルを挙げるのが大事だから、膝を曲げて反動の力で持ち上げようとすることはよくあるからな。

太ももをチェックするのは、当然といえば当然なんだが…、まあ、1人はそんな感じさ。

で、もう一人は、細男の左側で細男の腕をペタペタ触ってるのさ。それも反動で挙げないようにチェックしてるといえば、してるわけさ。

そして、極め付けは最後のもう一人。

細男の後ろでしゃがみ、細男のお尻を触ってる訳さ、しかも顔がもうお尻にくっつくんじゃないかって距離でよ。

まあ、お尻の反動をチェック……いやねーよっ!

流石にそこまでお尻重要視する必要ねーよ!

そもそも既に2人の補助が付いてるのに!

だから、兎に角、その光景が異様で異様でな。

ついつい見入ってしまった訳よ。

そしたらだ!

それまでずっと腕をさわさわしてた男が俺の事に気付いてな。

で、歩みよって来るわけよ。

いや、やべーよ。今度は俺が狙われるー!と思った訳さ!

でもよくよくその男の顔を見てみたら、かの有名なボディビルダーだったんだよ。で、その男が俺に向かってこう言ったんだ。

 

にーちゃん、良い筋肉持ってるじゃねーか。

今ならあいつの半額、25,000円でパーソナルトレーナーについてやってもいいぜ。

 

 

 

 

 

ブログノベル「彷徨えるランナー」

雨の降る夜。

 
それは、つい1週間前の事だ。
 
僕はいつものようにランニングをしていた。
 
時間は夜の23時を過ぎている。僕が普段走ってる道は大きな国道沿いの歩道。真っ直ぐ走って、橋を越え、折り返し地点(約5km)に着いたら戻ってくる。それで約10km。時間にして1時間強ってところか。
 
その日の雨はまあまあだった。
 
でも合羽さえ着てれば、それほど雨の中のランニングは苦ではない。むしろ心地いい時もある。あ、でも真冬はつらいかな。
 
先ずは折り返し地点まで真っ直ぐ走って、橋の所まで来た。橋の道幅は少し狭くなっている。人2人が並んで通れる程度。
 
その橋を渡ろうとした時、橋の真ん中辺りに大きなカートのようなものを押している人影が見えた。
 
その大きなカートには何か段ボールやゴミのようなモノがが積まれていて、道をさえぎっていた。
 
カートを押している人はフードを被っていて、顔は暗くてよく分からない。
 
僕は立ち止まり、隅によってどうにかやり過ごそうとした。しかし、その男は低い声でブツブツ言いながら、何も見えてないかのように真ん中をグイグイ進んでくる。
 
思わず僕は、「ちょっと!もう少しそっちに寄ってくれないと通れないよ!」と言った。
 
男は聞こえていないのか、そのまま真ん中を進もうとする。
 
ドン!
 
その大きなカートにぶつかった。
 
「痛っ!」
 
僕はイラっとして、
 
「おい!お前、人いるんだからもうちょい寄れよ!」
 
バン!
 
っと、その段ボールが積まれたカートごと男を押し払って、走って通り過ぎた。
 
 
 
ボチャン!!
 
 
 
何かが橋から下の川に落ちる音が聞こえた。
 
『どうせ、段ボールか何かのガラクタが落ちたんだろ!自業自得だよ!』
 
男は低い声で何かブツブツ言っていたが、
 
僕は気にせず橋を走り抜けた。
 
 
 
折り返し地点に着いた。
 
 
 
またさっきの橋を戻らなければいけない。
 
まださっきの男がいるとは限らないが、もし出くわして何か文句を言われたら面倒だな。
 
 
 
僕は道路を渡って反対側の歩道から帰ることにした。道路は3車線の大きな道路で、反対側に渡る道は信号も横断歩道もなかったが、夜も遅いし車も通らないだろうと、ガードレールをまたいで突っ切ることにした。
 
 
 
その時だった。
 
 
 
車のライトを消して大きなワンボックスカーが猛烈なスピードで走ってきた。
 
 
 
ヤバい!!!!
 
 
 
キキィーーーッッ!!!!ドン!!
 
 
 
 
 
意識が薄れゆく中、男の声が聞こえた。
 
「ヤベー!やっちまった!!誰も見てないよな?逃げろ!!」
 
ブゥーーーン!
 
 
 
 
 
僕はそのまま気を失った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ザーッ
 
 
 
雨の音が聞こえる。そしてうっすら人の声も…。
 
 
 
「大丈夫ですか?しっかりしてください。
 
私は橋の下に住んでる浮浪者です。凄い音がして、見に来てみたらあなたが倒れていた。あいにく電話が無いので救急車は呼べませんが、橋を越えたらコンビニがあるので、そこで救急車を呼んでもらいましょう。」
 
 
 
僕は何か台車のようなカートに乗せられた。
 
「こんな物で申し訳ないが、雨避けにはなるでしょうしばらくの間辛抱してくださいね。」
 
段ボールのような物を被せられ僕は運ばれているようだ。
 
『なんて親切な方なんだ…。でもどこかであったことがあるような…。』
 
 
 
「辛抱してくださいね。橋を渡りきるまでです。」
 
「大丈夫ですよ。」
 
「しっかりしてくださいね。」
 
その人はずっと僕を励ますようにささやき続けてくれている。
 
「もう橋の真ん中まで来ました。もうすぐですよ。」
 
 
 
その時、もう一人、誰か男の声が聞こえた気がした。『おい!お前、人いるんだからもうちょい寄れよ!』
 
 
 
そして、
 
 
 
 
 
ドン!
 
 
 
何かにぶつかった?
 
 
 
次の瞬間、僕を運んでくれた人とは別の、男の怒声のような声が聞こえ…、
 
 
 
僕は冷たく暗い闇の中で眠りに落ちた。
 
 
 
 
 
 
 
キキィーーーッッ!!!!ドン!!
 
 
物凄い音で目が覚めた。
 
気づくとそこは、橋の下の段ボール小屋。
「橋の上で事故か?」
 
僕は段ボール小屋を出て、急いで道路に横たわる人の方に走っていった。