ブログノベル「自動販売機」
ガタンッ!ゴトン!カシャカシャーン!
「まあでも、あれですね。さっきの話ですけど、灯台下暗しってやつですかね…」
「あれ?」
「え?どうしたんです?」
「お釣りが10円しか出てこない」
「ええ!?いくら入れたんですか?」
「150円」
「これ120円って書いてありますね。詰まってたのかも、ちょっと叩いてみます」
ドンッドンッ!
「出て来ないね。ってか、金額表示されるところに、買ったあと10って出たんだよ」
「じゃ、これ140円ってことだったんですか?」
「そうだと思う。もう一回買ってみよう」
「え?いやいいっすよ!電話しましょ…」
カチャンカチャン、ポチ、
ガランガラン!
「あ、」「ほら」
「ってことは…、ちょっと120円入れてみますね。それでスイッチが光らなければこれは、120円じゃないって事が分かります」
カシャンカシャーン、カシャン、
「光らない…」
「じゃ、あと20円入れてみます」
カシャンカシャーン
「光った」
「ってことは、これ、表記には、120円って書いてあるけど、140円ってことですね。なんだこれ。どっちが間違ってるんだ?」
「元が140円なんじゃないかな。ほら、隣りの同じメーカーのナタデココドリンクは130円だし」
「いや、それだったらこっちも130円で揃えるんじゃないですか?しかもナタデココドリンクが130円でこのミルクコーヒーが140円って、サイズ一緒なのにおかしいですよ!」
「そうだねー」
「僕、電話しますよ!こういうの前にもあったことがあって、電話したら、お金も郵便で届けてくれるし、それ以降その時の自販機も直してくれたんで」
「いやー、いいよいいよ、思い出だよ」
「なんすか!?思い出って!」
「20円でこんなおもしろ話が出来たんだから、良い思い出だよ」
「いやいや、面白くはないですよ。腹たちます!
例え仮に本当に140円するもので、表記の方が間違ってたとしても、こっちは120円と思って、ギリギリのお金で買ってるんですから!」
「いや僕ギリギリじゃないよ」
「ギリギリじゃなくても、こういうのはちゃんとしといた方がいいんですよ!その方がこの自販機メーカーの為にもなりますから」
「うん、まあそーかー」
「んじゃ、かけますね!」
プルルルルル
ガチャ
「あ、今ちょっと××の自販機でミルクコーヒーを買ったんですけどー、120円って書いてあるから150円入れて買ったらお釣りが10円しか出てこないんですよ!これってもちろんお釣り返してもらえますよね!」
「あ!!?おい!ちょっと!これ見て!」
電話越しに自販機の下の方を見る。
《ALL140円!!
表記されてる金額は、140円より高い物、安い物ありますが、一律140円です。》
「あ、はい…。今確認しました。下にデカデカと書いてありました。え?でも混乱させてしまって申し訳ありません?お金送ってくれるって?
いや、もういいです。それじゃ」
プチ
「………。なんだよこれ。いやでも普通こっちの表記しか見ないっすよねー?」
「良い思い出になったよ。
ホント、灯台下暗しだったね。」
完