ブログノベル「美術展」
呪いの名画
「現在、某博物館において、展示されている作品の中にひとつ、
長時間見てると絵に魂を抜かれてしまう、不思議な作品がある。
今回は、その都市伝説とも言える作品の実態に迫ります。」
「監督ー、こんな感じでいいですかねー?」
「おう、良い出来じゃねーか。あとはちょっとそれっぽい雰囲気のある絵でも用意して、放送のラスト5分位まで引っ張って、最後に公開しながら終了すれば視聴率も取れるだろう」
「でも監督ー、こういうのって、おはらいとかやった方が良いですよねー?
なんでもない絵だったとしても、そういう事で使うと良くないって聞いたことありますよー」
「そんなこと信じてんのか!?だったら、俺が絵を描いてやるよ!それなら、俺がどう使おうが、勝手だろ」
「はあー、それなら大丈夫そうですねー。でも監督、もう放送まであんまり日にちもないですけど、絵なんて描けるんですかー?」
「俺は芸大出てんだぞー!絵なんてぱぱーっと描いて明日持ってきてやるよ!」
次の日
「凄い!!これですか!?監督の描いた描って!!」
「ああ、ぱぱーっと仕上げたやつだけど、まあまあの出来だろ?」
「まあまあってか、凄いじゃないですか!普通に芸術作品っぽいです!何処と無くモナリザみたいな雰囲気もあるし、これは使えますね!」
「タイトルは、そうだなー『願い』ってのは、どうだ?」
「『願い』って、何か願い事でも込めたんですかー?」
「あー、そりゃま、視聴率上がりますように!ってな」
「そーですね!じゃ、この『願い』つてタイトルの絵を見ると魂を抜かれてしまう。って設定で進めていきますね!」
「ああ、放送楽しみにしてるぞ!」
放送後
「監督ー!大成功でしたよー!何より、あの絵の評判が凄いです!実際に観に行きたいって人も多くて、一体誰の展示会なのか、詳細を知りたがる問い合わせが殺到してます!」
「そうか…、」
「あれ?監督?どうしたんですか?
泣いてるんですか?」
「あ、いや、嬉しくてな…」
「確かに、視聴率も取れたし、監督が直々に描いた絵が大絶賛された訳ですからね!」
「あの絵はな、俺が学生の頃に必死になって描いた大作だったんだよ。」
「え?」
「それを、当時の美術の先コーは、
なにも伝わって来ん!こんなものはただの落書きだ!やめちまえ!って、全く認めて貰えなかったんだ。それで結局、絵の道を目指すのは辞めて、こっちの世界に入ったんだよ。まあでも、あの絵だけは、毎日徹夜で没頭して描いた絵だったから、捨てるに捨てられなくてな、それで、今回の放送の話が来た時に、ひょっとしたら使えるかも、って思ったんだ。」
「じゃあ、元々あの絵を出すつもりだったんですか」
「ああ、お前がああ言わなくても俺の方から何かしら理由つけて出すつもりだった。」
「まあ、なんにしろ、良かったですね!美術の先生には認められなくとも、何万人の人の心には響いた訳ですから!」
「ああ、見た人の魂を引き抜く、絵になったかな…」
完