ブログノベル「マラソン」
僕は走ることが大得意!
一度僕が走り出したら誰にも止める事が出来ない。
なんて、セリフ、言ってみたい。
僕は運動神経ゼロ。頭も良くない。取り立てて目立った能力はない。
平凡という言葉に相応しい位、平凡な人間だ。
極々一般的な会社で働く、極々平凡なサラリーマン。
そんな僕に、
一生に一度の活躍の舞台が現れた。
社内対抗マラソン大会。
会社で毎年恒例のマラソン大会。一位と二位にはわずかだが賞金も出る。
そんな賞金なんぞ、社内の中でもよりすぐりの脚自慢がかっさらっていくのだが、その日ばかりは違った。
なんと、マラソン当日、社内で集団食中毒が発生し、それでもマラソン大会は中止することが出来ず、感染していない人だけで、とり行うことになった。
しかも、
なんと男性社員で感染していないのは、僕だけ。
あとはみんな女性だ。
そんな状態なのに、マラソン大会を続行する会社も会社だが、1年に1回の行事で、それなりにお金も掛かっている為に、中止に出来ないということだ。
女性社員数十名の中、男性社員は僕1人。
うちの女性社員は、全員、デスクワーク専門で運動なんてからっきしだ。
どう考えても、僕が勝つ。
いくら僕が運動神経ゼロとはいえ、僕以上に運動をしない女性に負けるはずがない。
遂に、万年取り柄のなかった、どんな場所でも輝けることのなかった僕が輝ける舞台が出来た。
いくら女性相手だとはいえ、容赦はしない。油断も隙も見せない。必ず賞金を取りに行く。
パーーン!!
マラソン大会がスタートした。
僕は走った。
これまでにないくらい。
一生懸命に走った。
次から次へと女性社員を追い抜き、一気に1番…?
いや、前にはあと2人いる。
あれは、
社内食係りの2人だ。
どう見ても太っている。
なのに、
なのに何故、
追いつけない!
何故あの太った2人を抜くことが出来ない!?
僕は痩せていると言われれば微妙だが決して太ってはいない。運動神経ゼロとは言っても、運動を全くしないことで丸々太った、しかも体格体型体力的には自分よりも劣るであろう女性を追い越せないなんて!
いやだ!!
負けてたまるか!!
一生に1度だけでいい、
唯一1人だけの存在になりたい!
絶対に1番になるんだ!!!
ーーーーーーー
『えー、それでは、これにてマラソン大会を閉会します!
今年も社員ほぼ全員参加することが出来て、何よりでした。
みなさん、おつかれさまでした!』
「おーい!社内食係りの2人ー!
医務室見てきてくれるー?」
「まだ寝てましたよー!でももう良くなったと思いますー!満足気な顔して寝てるんで!」
「災難だったよなー。男性社員で唯一1人だけ食中毒で倒れるなんて」
完